刑事裁判では採用される証拠が限定的となり「再発防止策を講じるのに必要な論点が、刑事訴訟手続きでは十分に解明されていない」と総括しました。
また、「刑事事件の無罪判決で解消されているとは思われない多くの“疑問点”、“問題点”が再発防止には必ずしも活かされないまま、なお未解明のままに残されている」などとして、事故調査委員会を設置し、調査を実施するよう求める報告書を関係学会などに送付しました。
産科医が逮捕され医療界に衝撃を与えた2004年12月の福島県立大野病院の医療事故では、妊婦が出血多量で死亡した帝王切開手術を執刀した医師が業務上過失致死罪などに問われましたが、1審で「標準的な医療を逸脱した過失はなかった」として無罪が言い渡され、判決が確定しました。
同弁護団は、今年2月に遺族の協力を得て訴訟記録を入手。弁護士13人で構成する検討班が、大野病院事件の刑事事件の審理と無罪判決により、事故原因の究明や、再発防止がなされたかどうか、裁判で証拠採用された10倍以上の医学文献の参照や専門医からの意見聴取を基に、診療経過や事故後の対応など5項目を検証しました。
その結果、
(1)争点となった、胎盤をクーパー(手術用鋏)で剥がした行為の医学的妥当性
(2)手術前の準備や家族への説明、事故後の対応
(3)地域医療や輸血供給体制など医療制度上の課題
といった問題が裁判では十分に解明されなかったと指摘。有罪か無罪かの判断を目的とする刑事裁判では、再発防止の教訓を汲み取る事に限界があると結論付けました。
検討班の報告を受けた同弁護団は、「日本産婦人科医会」、「日本産科婦人科学会」、「日本麻酔科学会」に対し、事故調査委員会を設置し、原因究明や再発防止を図るよう要望しました。
大野病院事件:
2004年12月17日、福島県立大野病院に入院していた妊婦が帝王切開の手術中に死亡。06年2月18日に福島県警と富岡署が業務上過失致死と医師法違反の容疑で執刀の医師を逮捕した。07年1月26日の初公判以来、弁護側は一貫して無罪を主張。
公判では、1.出血などの予見可能性、2.出血が始まった後も胎盤の剥離を続けたことの妥当性、などが争点になっていた。08年8月20日の無罪判決に検察側は控訴せず、9月に無罪が確定した。
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