2010年06月14日

子宮頸癌の住民検診 − 効率的な島根方式

原因の殆どが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で罹る子宮頸癌になる前に、住民検診で発見しようという島根県の取り組みが、全国から注目されています。
検診の精度と受診率をアップさせるとともに、行政の財政負担の削減も期待出来るそうです。

子宮頸癌の住民検診は、基本的に20歳以上を対象に2年に1回行われます。
現状では、子宮の入り口をブラシなどで擦って粘膜の細胞を採り、顕微鏡で癌細胞の有無を調べる「細胞診」が中心です。

一方、島根県はこれに加えて、ウイルス感染の有無を調べる「HPV検査」を併用する検診を、平成19年に全国で初めて実施しました。
HPV検査では、細胞診と同様に採取された粘膜の細胞からDNAを取り出し、ウイルス感染の有無を調べます。

国立がん研究センターが公開する指針では、両検査の併用について「死亡率減少効果を判断する証拠が不十分」としています。
更に、殆どの人がウイルス感染が一過性の為、「過剰診断」となる可能性もあり、集団検診としての実施を勧めていません。

しかし、島根県立中央病院の岩成治医師は、「若い人に多い癌なのだから、検診の目的は死亡率減少ではなく、子宮を残せるように癌が進行する前に発見する事が重要。HPVのみが陽性の人は間隔を狭めて、1年後に検診してもらうだけなので、過剰診断ではない。指針は、医療現場の実態から懸け離れている」と指摘します。

岩成医師が、自治医科大付属さいたま医療センターの今野良教授等と、同病院を含む全国6施設で平成17年〜18年に行った研究では、
両検査を受けた2931人の内、子宮を取らずに治療出来る、癌に近い状態の「前癌病変(中等度、以下同)」と、それ以上の進行と診断された計50人を検出する精度が、細胞診で86%、HPV検査で94%でしたが、併用すると100%になりました。

更に、同病院だけでその後、細胞診が陰性だった924人の経過を3年間見たところ、HPV検査も陰性だった880人の内、「前癌病変」以上になった人は0.2%(2人)でしたが、HPV検査が陽性だった44人では、15.9%(7人)に上りました。

岩成医師はこの結果から、「精度が高い上、両方陰性の人は、検診間隔を3年間は空ける事が出来る」と考え、島根県と共同でモデル事業を立案。平成19年度から2年間、出雲市と斐川町が併用検診を始めました。

平成19年度は、車による集団検診で両市町合わせて2582人、20年度は、病院などで実施して同4433人が受診。その内の約94%に当たる6620人がHPV検査も受けました。

新検査導入をきっかけに、大々的にPRしたところ、車検診、病院検診ともに実施前に比べ受診者が1.4倍以上に増え、特に病院検診は、30代の受診者が約1.6倍、「前癌病変」以上の検出率も2.2倍に増えました。

二つの検査を受診した人の9割以上が、両検査とも陰性だった事から、受診間隔が3年で済む人が大幅に増え、県の試算で検診の助成費用は、3年間で3割削減出来る事が分かりました。

出雲市健康増進課の平井孝弥課長は、「癌になる可能性を調べ、数年間は大丈夫とお墨付きを与えられるのが今迄の癌検診と違う。その上、財政負担も軽くなる」と話します。

同市には、東京都や沖縄県など全国から視察が来ると言います。
両市町は、平成21年度以降も併用検診を続け、今年度は県内21市町村の内、17市町村に広がりました。

厚生労働省の平成21年1月の調査によれば、全国の自治体でHPV検査を取り入れているのは、36市町村(2%)に留まっています。これに対し、患者団体などからは、併用検診の拡大を求める声が聞かれます。

NPO法人「子宮頸がんを考える市民の会」に参加する米山節子さん(東京都、56歳)の長女朋恵さんは、結婚直前の平成19年3月、都内の診療所で細胞診を受けましたが、異常は見つかりませんでした。
しかし、12月に子宮頸癌と診断され、翌年7月に27歳で亡くなりました。最後まで前向きに闘病生活を送っていたと言います。

米山さんは、「HPV検査も併用していれば、もっと早く異変が分かったのでは。併用検診の自治体が増えて、一人でも娘のような思いをする人が減って欲しい」と訴えています。


欧米では、ウイルス感染の有無を調べる「HPV検査」もするように、学会が推奨しているそうです。
欧米の真似をする必要はありませんが、良い事は直ぐに採り入れた方が、みんなの幸せに繋がるのではと思います。

島根県が実証しているのですから。


子宮頸癌:

 子宮の入り口(頸部)にできる癌で、発症する日本人女性は年間約1万5000人、死亡者は約3500人と推計されている。ほぼ100%がHPVの感染が原因。
 HPVは、ヒトの皮膚や粘膜にいるありふれたウイルスで、性交渉経験のある女性の約8割が生涯の内一度は感染すると言われている。感染しても殆どが一過性で、免疫力によってウイルスは自然に消失するが、感染が続くと、数ヶ月〜10年程で正常細胞が癌化し始める。
 癌が極初期なら、子宮を残したまま治療可能で、更にかなり進行しないと自覚症状が無い事から、検診での早期発見が重視されている。


関連記事:毎日新聞

posted by ほうし at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | がん
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